屋根は、雨・風・雪を防ぎ、音が建築物内部に伝わるのを防ぎ、真夏の太陽を直接受けて、日差しを遮ってくれます。屋根があることで、私たちは、雨が降っても安心して暮らすことができます。家にとって重要な部分です。また、軒の出を大きくすることで、外壁への雨が掛かかりを少なし、建物の耐久性を高めることができます。
屋根仕上げと屋根の防水層の間に、通気層を設けます。夏季は、高温になった空気を、屋根の棟から外部に排気することで、屋根面から室内側に伝わる温度上昇を抑える効果があります。冬季は、屋根の通気層で温められた空気を、室内側に取り込み、熱交換機を経由して、熱を室内に取り込みます。
夏季は、床・壁・天井の表面温度が28℃になることが目標。
冬季は、床・壁・天井の表面温度が24℃になることが目標。
屋根面と屋根面が合わさっている部分で、屋根の一番高い部分を「棟」と言います。強風の影響を受けやすく、剥がれ・飛散・変形といった不具合が発生する部分なので、充分注意して施工します。
勾配のある屋根の一番低い部分を「軒」といいます。建物よりも突き出しているため、雨や雪、日差しを遮ることができますので、建物を守る役割を担います。台風など風が強い時には、風圧を受けるので、強固な構造が必要です。
屋根部分の外壁から出っ張っている部分で、雨樋がついていない側を「けらば」といいます。切妻屋根や片流れ屋根の、切妻側の屋根の端部分のこと。
現在建設されている日本の住宅の多くは、戦後から始まった現代工法で造られています。終戦後の焼け野原なった街の家不足を補う必要があったことから、新建材を用い、ローコストで工期を短縮することがミッションでした。日本古来から脈々と受け継がれてきた家造りが、途切れてしまったのです。そして、仮設的な現代工法は、いつしか誰もが考える時代の最先端の工法と信じられるようになりました。この現代工法は、シックハウスやアトピー、壁体内で発生するカビ、さらには木材の腐食、夏になると2階が暑い、といった多くの問題を抱えていたのです。
現代工法で造られる屋根には、大きな問題点が3つあります。
真夏の太陽を受け屋根面の熱が天井裏まで達し、2階が暑い。気密性が高いければ高いほど、熱は逃げ場を失うため、さらに暑くなる。
熱伝導率が低いグラスウールなどの断熱材は、熱容量が低いため熱を蓄め易い。一度熱くなった断熱材はなかなか温度が下がらない。屋根の裏側や天井仕上げの上側に設置された断熱材に蓄熱し、夜になっても室内が暑い。
屋根のアスファルト防水層の両側で結露が発生している。アスファルト防水層裏側で発生した結露水は 下地に貼ってある合板面に染み込み 蒸発できないのでカビや腐食が発生している
どんな小さな水蒸気も通過できない、絶対おに雨漏りのしないアスファルト防水シートは、現代工法の代表格といえるでしょう。屋根面にアスファルト防水シートを貼れば、雨漏りしないという魔法の防水シートとして、重宝されてきました。今では、日本の住宅で、アスファルト防水シートを貼っていない住宅を探すことが難しいくらいです。
しかし、車のボンネットが結露している時は、アスファルト防水シートの上面と下面でも結露が発生していることが解かりました。上面の結露水は、雨水と同じように、流れてしまうので問題ありませんが、下面の結露水は行き場が無いので、垂木や下地の合板に染み込みます。カビが発生し、木部の腐食が始まります。
左側の透湿ルーフィングではきわめて良好な乾燥状態が継続しているのに対し、右側のアスファルトルーフィングでは、激しい結露が発生している。
引用資料 透湿ルーフィング協会のホームページ 東洋大学工学部建築学科土屋研究室による
アルミ遮熱シートを屋根の垂木に設置したところ。
真夏に駐車しておく自家用車のハンドルの上に敷くアルミのシートが遮熱シートです。クーラーボックスなどでもアルミ遮熱シートが役立っています。 |
住宅用に開発されたアルミ遮熱シート。梱包用のプチプチシートの両面にアルミ箔を蒸着させています。 |
一般的に住宅の断熱材を選ぶ時は、熱伝導率を基準に選定されています。
日本の住宅の53%に採用されているグラスウールの熱伝導率は0.036W/mK、採用率23%のポリスチレンは0.46~0.52W/mKといった具合です。
どちらも、熱伝導率が低く、コストが安いということで、日本の住宅の新築4軒の内3軒に採用されている、いわゆるスタンダードな断熱材です。
しかしここに、大きな盲点があります。
それは、熱伝導率が低い断熱材が充分に入っている住宅であっても、夏2階が暑くなることです。1階から階段を上がり2階に着くころには、途端にムンという暑さを感じたことがあることでしょう。また、陽が落ちて夜になり、外部は昼間の熱射から開放されても、室内は依然として暑く、寝苦しい夜を過さなければなりません。
この暑さの原因は、グラスウールもポリスチレン熱容量が少ないため、断熱材そのものが、熱を貯えてしまい、蓄熱材となってしまうことにあります。熱容量が少ない断熱材は、熱を貯え易いため、夏の陽射しを受けて、数時間で熱を貯えます。陽が落ちても、なかなか温度が下がらず、夜になっても熱を放出し続けます。壁の中に電熱パネルが埋め込んであるようなものです。
グラスウールや発泡系プラスチックスでは、熱容量・調湿性・防音性に欠けます。そこで注目されるのが多機能を持った自然系の断熱材です。具体的には、木の繊維「ウッドファイバー」、古紙利用の「セルロースファイバー」、あるいは羊毛系の「ウール」などです。
とくに木質繊維断熱材「ウッドファイバー」は、断熱性能はもとより、熱緩和・防音・調湿など、木でなければ持ち得ない特性に加え、生産に必要とするエネルギーがほかの建材に比べて極端に小さく、生産の過程で発生する廃棄物がでないなど、住む人やつくる人そして地球環境に優しいサスティナブルな次世代型エコ建材といえるものです。 また、荒れ放題の山林を健全化する観点、再生利用な建材という観点から、間伐材利用が可能なウッドファイバーは、これからの社会にピッタリの「総合機能断熱材」です。
2階の屋根部分の全面に、ウッドファイバーを施工しています。
断熱材名称
重量
重量比熱
熱容量(1㎥当り)
吸湿量
放湿量
素材
ウッドファイバー
重量 40kg/㎥
重量比熱 2.1kJ/kg·K
熱容量 84,000J/K
吸湿量 229g/㎥
放湿量 180g/㎥
自然素材
ウッドファイバー
木の繊維を細かくほぐし空気を固定したもの。製造温度は200℃程度、間伐材や製材屑など木であればどのようなものでも使用できます。
リサイクルが可能なだけではなく木材を積極的に使用できること、豊かな山や川の再生につながることなど、材料が高価なことは吸放湿、防音、熱容量などの性能から考えれば問題ないといえます。
グラスウール
重量 24kg/㎥
重量比熱 1kJ/kg·K
熱容量 24,000J/K
吸湿量 15g/㎥
放湿量 13g/㎥
無機繊維系素材
グラスウール
ガラスを綿状にして細かい繊維の中に空気を固定させたもの。製造温度は1300℃程度。原料の85%はリサイクルガラスを使用しています。
価格が安くリサイクル可能な材料なので一般に普及しているが、吸放湿性が無く結露しやすいこと、防音性能や熱容量など、機能面で問題が残ります。
ロックウール
重量 40kg/㎥
重量比熱 1kJ/kg·K
熱容量 40,000J/K
吸湿量 0g/㎥
放湿量 0g/㎥
無機繊維系素材
ロックウール(岩綿)
玄武岩、鉄炉スラグなどに石灰などを混合し、高温で溶解し生成される人造鉱物繊維。
セルロースファイバー
重量 40kg/㎥
重量比熱 1.3kJ/kg·K
熱容量 50,400J/K
吸湿量 132g/㎥
放湿量 101g/㎥
自然素材
ルロースファイバー
回収された新聞古紙を主原料に防熱・撥水性能を付加しています。
ウール
重量 8kg/㎥
重量比熱
熱容量
吸湿量 22g/㎥
放湿量 17g/㎥
自然素材
ウール
羊毛とポリエステルを混合して生成されれています。
赤ちゃん用の紙おむつ
国産の防水透湿シートのほとんどのものは、紙おむつの技術でつくられています。薄いフィルムに水が通らず、水蒸気が通る穴を開け、不織布で裏打ちしたものです。
不織布タイプ
倍率200倍
不織布タイプ
倍率1500倍
フィルムタイプ
倍率200倍
フィルムタイプ
倍率1500倍
透湿抵抗(透湿性)は住宅内の湿気が透湿防水シートを通して、屋外に排出される機能で、㎡・s・Pa/μgの単位で表されます。数値が小さいほど湿気は多く屋外に放出され、壁体内の結露も起きにくくなります。防水性は、雨が透湿防水シートを通して住宅内に浸透しようとする圧力に耐える機能です。数値が大きいほど壁体内への雨水の浸入を防ぎます。
透湿防水シートは、電子顕微鏡写真で確認できるように、0.5μmの不織布の繊維同士の隙間、またはフィルムの微孔から、「透湿防水シート機能発現イメージ」図のように湿気が通過し、雨は遮断されます。